乗鞍ヒルクライムへの道(仮)

Rule#32:Enjoy the Little Things.

20150823_アイアンマンジャパン北海道(Swim:3.8km&Bike:180km&Run:42km)

アイアンマンジャパン北海道に参加してきたので、その時のことを書こうと思います。(メモのようなもので、ほとんど箇条書きですが・・・)

アイアンマンジャパン北海道は3種目合わせて226.2km(スイム:3.8km、バイク:180.2km、ラン:42.2km)、トライアスロンの中でもアイアンマン・ディスタンスという規格上最も長いカテゴリです。

【スイム】

スタートの合図とともに、アイアンマンレースがスタートしました。洞爺湖でのスイムは、確かに海水と比べて少し浮きにくい感じはしたものの、波や海水特有のしょっぱさがないだけ泳ぎやすく感じました。

意外だったのは、アイアンマンレースにおいても平泳ぎをしている選手の多さでしたが、気づいたら出来るだけ離れるようにして、脚の接触によるアクシデントを避けるように心掛けました。

ウェーブスタートの為、後ろのウェーブから早い人達がどんどん前に出てきます。後ろから早い選手に抜かれた後、あるいはちょうど良いスピードの選手を見つけた時は、可能な限りドラフティングさせてもらうようにしました。

1周回をして、いったん陸に上がった時に、自分のウェーブの中での位置を確認しました。かなりたくさんの人に抜かれた気がしていたのですが、丁度真ん中くらいの位置にいることがわかり、少なくとも制限時間内にはスイムを終わらせることができるだろうと思い一安心。後は、出来る限り自分のペースで体力を温存させて泳ぎます。3.8kmは長かったですが、なんとか無事にトランジションエリアへ。

【バイク】

トランジションでタイムを確認してみると、スイムが予想していたよりもかなり良いタイムだったことがわかりました。思いがけない貯金ができたことで、気持ち的には大分リラックスできたように思います。おまけにそれほど疲れも感じなかったので、ここまでは順調そのものでした。

トランジションバッグを受け取り、バイクの準備をして走り出します。走り出してすぐに、スピードメーターが反応してないことに気がつきました。おそらく、原因は前輪の左右の向きが逆なことだと思われました。止まって直せばすぐに解決するとも思いましたが、スピードメーターがなくてもそれほど問題はないと判断して、そのまま走ることを選択しました。最初の方は周りの選手達のスピードに合わせて様子を見ながら走って行きます。

最初のエイドでボトル交換の仕組みがどんなものかがわかったので、次のエイドからは、ボトルキャッチャーにボトルを投げ入れて新しいボトルに交換するようにしました。水かスポーツドリンクを走りながらボランティアの方から受け取るような形です。

最初の方は、本当に走っていて楽しい感じで、このままメカトラブルさえ回避できれば完走は大丈夫そうだと思っていました。ひさしぶりに走る北海道の景色を楽しむ余裕もあり、沿道で激しく腹踊りしながら応援してくれている男の子に思わず吹き出したりしていました。

近くを走る海外選手のゼッケンを見ながら、何ヶ国の国旗を走っている間に見ることができるのだろうかと考えてみたりもしました。アメリカ、ロシア、中国、韓国、シンガポール、カナダ、スペイン、イタリア、スイス、ドイツ・・・世界規模で行われているレースなだけあって、国際色が豊かです。

しかし、そんな序盤の楽しさから状況は一変しました。落とし穴は、主に補給の失敗と寒さにありました。まずは補給の失敗、胃の調子が悪くなり気持ち悪くなってきてしまいました。エナジージェルとスポーツドリンク、どこが致命的だったのかはっきりしませんが、BCAA辺りが関連しているような気がします。おそらくもともと相性が悪いのに加えて、過剰摂取になっていたのでしょう。

これ以上悪化すると走れなくなりそうだったので、対策を講じる必要がありました。補給をすることが逆に命取りだと思ったので、水とナッツとフルーツだけに切り替え、エナジージェルはほとんど取らないようにしました。そして補給の失敗も引き金となってか、急激に寒くなったのでニセコ五色温泉への登りの手前のエイドでウィンドブレーカーを着込むことにしました。

周りの選手で登りの前に着ている選手なんていませんでしたが、ウィンドブレーカーを着ていても寒いほどでした。本格的な登りが始まってからもそれは変わらず、体調が悪いのは明らかでした。登りを契機に急激に失速し、たくさんの選手に抜かれることになりました。

それでもふらふらになりながら、登り切った地点にあるエイドまで来ることができました。比較的、今の体調に影響がなさそうなバナナとレッドブルを補給し、長い下りへ。少しでも下りで稼いでおこうと、安全に支障がない範囲でペースを上げます。一度下り切ってからは、小刻みなアップダウンが続き、トランジションまであと5kmというところからは長めの登りが待っていました。

終盤はここしばらくバイクで感じたことがないくらい厳しかったです。8月に入ってからはバイクの輸送の関係もあって60kmしか練習で走ってないことも良くなかったのかもしれません。スイムとランに比べて、バイクはどんなコースでも何とか切り抜けられると甘く見ていた部分もありました。特に走り始めが調子良かっただけに、ここまで苦しめられることになるとは全く考えていませんでした。

なんとか180kmを走り終えて、トランジションエリアへ。ほんの少しだけ休憩も挟んでランに移ります。あと20kmくらいコースが長かったら、止まって休憩を余儀なくされていたと思いました。

【ラン】

バイクの最後の方は、体調不良の影響でもう漕げなくなる寸前でした。なので、ランは相当厳しいものになると思いましたが、ここまでの経過時間は約9時間で、17時間という制限時間まではあと8時間あります。8時間というのは42.2kmの距離を歩いたとしてもゴールまで辿り着ける時間です。スイムとバイクの貯金のおかげで、なんとか完走は行けるだろうという見通しが経ちました。

しかし、不意に脚を痛めたりするとそれも適わなくなるかもしれません。特に洞爺湖周辺までに至る序盤のコースは、トレイルランのような起伏のあるコースとなっている為、油断すると大変なことになりそうでした。

明らかに周りの選手より走るペースが遅く、どんどん抜かされて行きますが、少なくとも20kmを過ぎるまではこのペースで行こうと考えてゆっくりと進みます。補給は水とレッドブルとバナナだけに絞りました。エイドが細目に用意されているので、確実に補給をしていきます。まだ体調は戻り切っていませんが、ひどかった時よりは少しずつ良くなってきてました。

何か塩気のある暖かいものでも飲みたいなとふと思い、24.6km地点のエイドでオニオンスープが用意されていることを思い出しました。そのエイドまでは今のペースのまま頑張って、そこで少し休憩をし、最後の勝負を仕掛けようと考えました。

20kmを過ぎたくらいから日が暮れ始めてきました。そして、念願の24.6km地点のエイドに辿り着き、オニオンスープをと思ったのですが、お湯が準備できなかったとのことで、品切れとなっていました。真っ先に仕方がないという言葉が頭の中に浮かびましたが、緊張の糸が完全に切れてしまったらしく、一気に脚が重たくなり走れなくなってしまいました。

オニオンスープがここまで心の支えになっていたのかと少し驚きました。考えようによっては、オニオンスープのおかげでここまで何とか走って来れたといってもいいのかもしれません。しかし、もうオニオンスープに頼るわけにもいかず、ここからが本当の正念場となります。

25kmを付近ではもう真っ暗、道路に点々と置かれたLEDライトの灯りが道しるべとなります。一応、ヘッドライトを用意してきたものの、調子が悪くて使い物になりませんでした。エイドで点滅してきらきらと光る棒をもらったのですが、それが頼りです。

30kmを過ぎたくらいから風が強くなり、洞爺湖の方から風波の音が聞こえるようになってきました。程なくして、雨が降ってきました。しばらくすると止んだものの、結構な降り方だったので、ウェアも濡れてしまい、道路には水たまりができている箇所もありました。

とにかく歩こうと、必至で歩いて進んでいくと、スマホが結構な頻度で鳴っていました。確認してみるとアスリートトラッカーでゴールが近くなってきたので、仲間がLINEで応援してくれていたのでした。あと5km、やれるだけのことはやろうと思い、気がついたら再び走り出していました。丁度、ゴール地点のホテルの方向に花火が打ち上がっているのが見えました。

沿道の応援にも力をもらい、最後の力を振り絞ってゴール地点のホテルに辿り着くと、最後のフィニッシュゲートまで続く道の両サイドでは、大勢の人達が片手を伸ばして待っていました。両手を上げて、ハイタッチをしながらゴールテープを切りました。

これでやっと長かったレースが終わりです。3種目で226.2km、これだけ距離が長いと思った通りにはやはりいかないなと思い知らされました。それでもついに、アイアンマンレースを完走することができました。

視線を下に向けていると、横から差し出された右手に気がつきました。握手をすると、それは白戸太郎さんでした。これだけの大きな大会を運営するのは、レースを走ることよりも困難なことだろうと思いました。それが実を結び、1人1人と握手するこの瞬間がどういったものであるか、少しだけ想像してみたりもしました。

そもそも、選手によって事情も様々、実際に出てみようと思ったとしても、参加するまでが果てしなく大きな壁となる場合も多いと思います。ですがその反面、様々な調整をしたりの困難なことが多い程、大きな感動やドラマが詰まっているものだとも思います。それを目に見える形に切り出すのが、アイアンマンレースの1つの側面なのかもしれません。周りを見渡してみると、会場は実に晴れやかな顔で溢れていました。

このレースは数千人規模の関係者や周辺地域の方々のご理解によって開催されていますが、レースの最中もその前後も、とても良くして頂きました。なので、大会が終わってから何らかの形で還元できたらなと思いました。1人1人にお礼を言う訳にもいきませんので、ふるさと納税でもしてみようかなと思ったりもしています。

〜リザルト〜

RACE TIME:15:15:32
SWIM 1:19:07,BIKE 7:18:27,RUN 6:17:49
T1: Swim-to-bike 10:03
T2: Bike-to-run 10:06

以上です。