乗鞍ヒルクライムへの道(仮)

Rule#32:Enjoy the Little Things.

北海道自転車旅(道東・桃岩荘編)その2

【2日目 根室~知床】

夜、余震で少なくとも1回は起きた。引き続き不安な状況の続く2日目の主な予定は知床岬クルーズ。根室から海岸線沿いに移動して知床峠を越えてウトロまで移動する。根室からウトロまでは170km程。知床岬クルーズの出発時刻である14:00に間に合わせる為に3:00に出発する予定だったが、こういう時だから日が出るまではゆっくりしていった方がいいと宿のご主人からご意見を頂いたのでその通りにした。停電が続いている以上、暗い内に出発するのは普段以上に危ない。そもそも震災の影響で知床岬クルーズが予定通り運航される保証もない。運航に関する情報はお昼頃までにはWebサイト上に掲載されるとのこと。

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ご主人と女将さんに見送って頂いて5:30に出発。相変わらず停電は続いていて信号機は機能していない。全くテレビも見れていない為、災害の全容が未だにつかみ切れていなかった。宿のご主人曰く、こんなに長く停電が続くことは初めてとのこと。

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根室から西に移動している途中でつがいの丹頂鶴を見つけた。野生動物にとっては停電など全く関係がない。きっと普段通りの生活をしているのだろう。知床に方面に向かう為、途中で北上を始めるとしばらくして川に差し掛かった。

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橋から辺りを見渡すと湿原が広がっている。どうやらここはヤウシュベツ川湿原というらしい。観光地化が進んでなく、車だったらそのまま素通りしてしまいそう。ここで昨日もらったおにぎりを朝食として食べることにした。

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昨日の釧路湿原のような広大さはないものの、静かで景色も良くてとてもいい場所だった。北海道に来てから1番ゆったりとした時間が流れる。いっそこのまま1日中ここに居たい。しかし、ずっとここに留まる訳にもいかない。出発時間は遅れたものの、知床岬クルーズの時間にはまだ何とか間に合いそうだった為、休憩も程々に先を急ぐことにした。

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脚を止めずにただひたすら北上を続けていく。途中、道行くほとんどのライダーがハンドサインで挨拶をしてくれて嬉しく感じた。前に北海道に来た時もこんな感じのやりとりがたくさんあったことを思い出して今北海道にいるんだなと改めて思った。しばらくするとヤウシュベツ川湿原の近くで追い抜いて行った車の人が道の駅で休憩していた。大きな声で「休んでいきなよ!」と言ってくれたが、なるべく早い時間帯に距離を稼いでおきたかったのでハンドサインだけ返してそのまま進む。しばらくすると休憩を終えたその車の人が再び追い抜いて行ったのだが、よく見ると車の中でハンドサインをしてくれていた。こんな感じのやり取りがあるのは、北海道は拠点と拠点の間の距離が長いからということもあるのかもしれない。本当にちょっとしたことだけど、こういう時はそういったことが妙に面白く思える。

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段々と羅臼に近づいてくると今回の旅で初めて自分以外のチャリダーを見つけた。停まっていたので話し掛けてみると、この後、知床峠も登るとのことだったので宿で頂いた食料をいくらか分けることにした。昨日は辛うじて営業していたセイコマも今日は閉まっている店舗ばかりで、食料の調達が少し難しい。道の駅もまだ営業を再開していないところが多いようだ。車も営業しているガソリンスタンドが少なくてガス欠が心配な状況だが、自転車も食べないと漕ぎ続けることはできないのでこのような状況では同様にガス欠の不安がある。普段、コンビニや道の駅等が身近にあるから安心して長い距離も走れるけど、それが無いと事態はガラッと変わってしまう。

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知床峠クルーズの出航場所はウトロだが、羅臼に着いた時点で間に合うかどうかが微妙な時間だった。開催するかどうかは運営会社のWebサイトを参照する必要があったが、携帯電話はずっと圏外のままで使うことができない。幸い羅臼の道の駅は営業を再開していたので公衆電話を使って確認しようと試みるが、公衆電話はまだ使えない状態で、道の駅の固定電話も同様だった。ウトロに行くには知床峠を越える必要があるのだが、今の時間では全力で走らない限り間に合わない。間に合ったとしても中止になっていたら目も当てられないということで心底困ってしまった。仕方なく、開催の可能性を信じて知床峠を登り始める。

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登り始めてすぐに知床ビジターセンターという施設があった為、駄目元で使える電話がないかを係りの人に聞いてみると、電話は使えないがインターネットが使える環境はあるとのこと。事情を説明するとすぐに調べて下さり、知床岬クルーズが中止となったことがわかった。時間に余裕ができた為、館内の知床に関する映像を見たり、近くにある温泉、熊の湯でゆっくり過ごすことができた。天国と地獄は紙一重だと思う。

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熊の湯を出て再び知床峠を登り始めたものの、荷物を積んだ自転車ではこれが結構きつい。ここ最近、自転車にそれほど乗っていなかったこともあって余計にそう感じた。騙し騙し登っていくと、標高が段々と上がっていき、羅臼岳が眼前に迫って来る。

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知床峠のピークに到着。なかなか登り応えのある峠だった。ここを越えると後はウトロまで下るだけ。これで今回の旅の最大の難所を越えたことになる。宿には16:00と余裕のある時間に到着することができた。

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元々泊まる宿が停電で営業が満足にできないということで、自家発電設備のあるグループの別の宿にグレードアップ。設備もサービスも充実していて自転車旅とは思えないほど優雅な時間を過ごすことに。

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特に夕食のバイキングは料理の数も多く、その一つ一つがどれも物凄く美味しくて驚いた。停電がまさかこういった形でいい方向に転ぶとは思いもしなかった。一見悪く思えるような事柄や状況だって反転することがあるし、いざとなったら考え方一つでひっくり返すこともできる。ちょっとしたことや予期せぬことを楽しむのがこういった旅の醍醐味なのかもしれない。 

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走行距離:173km

 

~続く~