北海道自転車旅(道東・桃岩荘編)その2
【2日目 根室~知床】
夜、余震で少なくとも1回は起きた。引き続き不安な状況の続く2日目の主な予定は知床岬クルーズ。根室から海岸線沿いに移動して知床峠を越えてウトロまで移動する。根室からウトロまでは170km程。知床岬クルーズの出発時刻である14:00に間に合わせる為に3:00に出発する予定だったが、こういう時だから日が出るまではゆっくりしていった方がいいと宿のご主人からご意見を頂いたのでその通りにした。停電が続いている以上、暗い内に出発するのは普段以上に危ない。そもそも震災の影響で知床岬クルーズが予定通り運航される保証もない。運航に関する情報はお昼頃までにはWebサイト上に掲載されるとのこと。
ご主人と女将さんに見送って頂いて5:30に出発。相変わらず停電は続いていて信号機は機能していない。全くテレビも見れていない為、災害の全容が未だにつかみ切れていなかった。宿のご主人曰く、こんなに長く停電が続くことは初めてとのこと。
橋から辺りを見渡すと湿原が広がっている。どうやらここはヤウシュベツ川湿原というらしい。観光地化が進んでなく、車だったらそのまま素通りしてしまいそう。ここで昨日もらったおにぎりを朝食として食べることにした。
昨日の釧路湿原のような広大さはないものの、静かで景色も良くてとてもいい場所だった。北海道に来てから1番ゆったりとした時間が流れる。いっそこのまま1日中ここに居たい。しかし、ずっとここに留まる訳にもいかない。出発時間は遅れたものの、知床岬クルーズの時間にはまだ何とか間に合いそうだった為、休憩も程々に先を急ぐことにした。
段々と羅臼に近づいてくると今回の旅で初めて自分以外のチャリダーを見つけた。停まっていたので話し掛けてみると、この後、知床峠も登るとのことだったので宿で頂いた食料をいくらか分けることにした。昨日は辛うじて営業していたセイコマも今日は閉まっている店舗ばかりで、食料の調達が少し難しい。道の駅もまだ営業を再開していないところが多いようだ。車も営業しているガソリンスタンドが少なくてガス欠が心配な状況だが、自転車も食べないと漕ぎ続けることはできないのでこのような状況では同様にガス欠の不安がある。普段、コンビニや道の駅等が身近にあるから安心して長い距離も走れるけど、それが無いと事態はガラッと変わってしまう。
知床峠クルーズの出航場所はウトロだが、羅臼に着いた時点で間に合うかどうかが微妙な時間だった。開催するかどうかは運営会社のWebサイトを参照する必要があったが、携帯電話はずっと圏外のままで使うことができない。幸い羅臼の道の駅は営業を再開していたので公衆電話を使って確認しようと試みるが、公衆電話はまだ使えない状態で、道の駅の固定電話も同様だった。ウトロに行くには知床峠を越える必要があるのだが、今の時間では全力で走らない限り間に合わない。間に合ったとしても中止になっていたら目も当てられないということで心底困ってしまった。仕方なく、開催の可能性を信じて知床峠を登り始める。
熊の湯を出て再び知床峠を登り始めたものの、荷物を積んだ自転車ではこれが結構きつい。ここ最近、自転車にそれほど乗っていなかったこともあって余計にそう感じた。騙し騙し登っていくと、標高が段々と上がっていき、羅臼岳が眼前に迫って来る。
知床峠のピークに到着。なかなか登り応えのある峠だった。ここを越えると後はウトロまで下るだけ。これで今回の旅の最大の難所を越えたことになる。宿には16:00と余裕のある時間に到着することができた。特に夕食のバイキングは料理の数も多く、その一つ一つがどれも物凄く美味しくて驚いた。停電がまさかこういった形でいい方向に転ぶとは思いもしなかった。一見悪く思えるような事柄や状況だって反転することがあるし、いざとなったら考え方一つでひっくり返すこともできる。ちょっとしたことや予期せぬことを楽しむのがこういった旅の醍醐味なのかもしれない。
走行距離:173km
~続く~