乗鞍ヒルクライムへの道(仮)

Rule#32:Enjoy the Little Things.

北海道縦断4日目(3)

北海道縦断4日目(2) - 乗鞍ヒルクライムへの道(仮)

〜Hurry Up!〜

18:00に道の駅天塩を出発した時点では、なんとか今日泊まるライダーハウスに21:00までに到着できる予定だった。残す距離は70km足らず、平均時速25kmをキープして走ればお釣りがくるはず。しかし、海岸線を通ってノシャップ岬まで抜けるつもりが、真っ直ぐ行ったら国道40号に入ってしまい、走らなければならない距離が増えてしまった。一体、どこを曲がれば良かったのか、未だにはっきりわからない。サロベツ原野の辺りの道をしばらく走っていくが、街灯がまったくない。道路の両端を指し示す赤い矢印の形をした電光板が点滅していおり、それが自転車のライトを除くと唯一の明かりだった。一定間隔で何も見えない真っ暗な世界が広がり、自転車のライトでは心もとない。不思議と赤い点滅に急かされているようにも思えた。ここでパンクでもしてしまったらという不安が頭をよぎる。とにかく市街地に早く抜けたいと思った。

途中の休憩所の温度計は13度を表示していた。稚内の夜の寒さを心配していたが、レインウェアを着込んでいたこともあり、止まらない限りは寒さは気にならない。道を間違えたことから距離もいくらか伸びてしまい、時間も押してきている。しかも悪いことに右膝の調子が悪く、ある程度までのペースなら問題ないが、それを超えると一気を痛め切ってしまうだろうことがわかった。しかし、時間も迫っているので脚を痛めるのも承知の上でペースを上げていく。幸いかどうかはよくわからないが、明日と明後日はそれほど距離は走らない。1日の走行距離という意味でも、北海道縦断という意味でも今日が山場だった。途中で自転車は測道を走らなければならない区間があり、車線に合流してからも交通量や車の走るスピードの割に道が狭く、後ろから追い抜いていく車がかなり怖い。ペースが上げることが難しい。

そんな中、無事になんとか稚内の市街地にたどり着き、たくさんの明かりが見えた時には本当にほっとした。21:00には間に合いそうになかった為、一旦コンビニに寄り、今日泊まる宿サガレン(サガレンとはサハリンという意味らしい)に遅れる旨の連絡を入れる。そうすると、待っているから気をつけてきて下さいという言葉をかけてくれた。結局、15分程遅刻してしまったが、サガレンに到着することができた。ここが北海道に来てからの初のライダーハウス。宿の人に迎え入れられて、簡単な手続きを済ます。自転車は隣接しているガレージに入れさせてもらった。

函館を出発してから4日目、ようやく稚内まで到着することができた。ここまで810kmくらい走ってきたことになる。他の日はそれほど大変さは感じなかったが、290km走った今日はさすがに堪えた。右膝も痛め切ってしまった。とはいえ、ここまで致命的なトラブルもなく走り切れたことは本当によかった。考えようによっては、この行程を走り切る為のこれまでの練習だったのかもしれない。今ぐらいの走る力がなかったら、4日間でここまでは多分たどり着けなかったと思ったからだ。これまで自転車を通じて知り合った全ての人に感謝したい気持ちになった。おそらく今は1人で走ってはるけれど、1人だけではこういった形で走り切ることはできなかったんじゃないかと思う。

あとはゴールの宗谷岬に行けば、目的である北海道縦断は達成となる。もちろん、その前には礼文島にもしっかり寄っていくつもりだ。

〜ママチャリダー

サガレンでは、1名だけ他の宿泊客がいた。ラーメン好きの彼は、札幌ラーメンを食べる為だけに1ヶ月前にママチャリで長野県を出たという。彼の人柄はとても面白く、夜も遅かったが話は大いに膨らんだ。ママチャリと言ってもピンキリだが、彼のママチャリは本当に普通のママチャリだ。それでも、1日100km前後、時には150kmという距離を走ってここまでやってきたらしい。札幌までで旅を終わらせるつもりだったが、途中でライダーの方に北海道まできたのにそれではもったいないのではないかと諭されたらしく、予定を変更して宗谷岬までコマを進めたとのこと。きっと北海道を旅をするにあたり、宗谷岬をゴールに設定している人は多いと思うが、旅の中でそれが決まることもあるらしい。

長野からの道中、札幌ラーメンを食べるまではラーメン断ちをしていたこと、上着やテント・寝袋は現地調達しながらここまできたこと、自販機はほとんど使わずにペットボトルをカゴに2個平積みして補給していること等、本当に色々な話を聞かせてくれたが、どの話もなんだか面白かった。今日、宗谷岬まで行ってきたということだった為、この日が彼の1ヶ月に渡る旅のゴールだった訳だが、そんな彼にゴールの宗谷岬に行った時の感想を聞いてみると、「ニヤニヤがとまらなかった」と言っていた。自分も最終日には宗谷岬に行くことになるが、その時にはどのような気持ちになるのだろう。彼の話を聞きながら、ふとそんなことを思った。

旅を終えたら、ママチャリ以外の自転車にも乗ってみたくなったりしないかと聞いてみたところ、「このママチャリが好きだから乗り換えるつもりはない」という清々しい回答をもらった。

彼は自分のやったことを人に話すということは積極的にはしないだろうと思った。彼のような人の話を聞くには直接捕まえるしかない。今回のように話す機会がなかったら、まず何をやっているかを知る術はないのだ。世の中には、人知れず各個人にとっての想像を越えるようなことをしている人達も無数にいるのだと思うと、人に対しての興味も沸々と湧いてくるような気がした。残りの2日間。どのくらいそういった出会いに恵まれることができるだろうか。

明日は、朝一のフェリーに乗って礼文島に行こうと思う。

ルート:旭川和寒士別名寄美深音威子府〜手塩〜幌延〜豊富〜稚内
走行距離:290km
獲得標高:1400m

北海道縦断5日目(1) - 乗鞍ヒルクライムへの道(仮)

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